胸が痛いと思ったら…

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皆さん、運動中や睡眠中に胸の痛みを感じた事はありませんか?
胸痛の原因は多岐にわたり、肋間神経痛や筋肉の痛み、食道や胃の病気に起因するもの、はたまた、精神的要素が影響するものまで実に様々です。その中に、虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)に伴う胸痛があります。これは、時に命を落としかねない怖い病気の徴候です。

心筋梗塞とは、心臓を養う血液を供給する血管(冠動脈)が閉塞してしまい、心臓の筋肉が壊死を起こす結果、死に至る不整脈を含む心停止や心破裂、心不全をきたす病気です。現在もなお死亡率が高い疾患の一つで、心筋梗塞を起こした人の約半数が、病院に辿りつく前に命を落としてしまうという報告もあります。病院に到着し治療を行っても15%程度の人は死に至ります。狭心症は心筋梗塞の一歩手前の状態です。

このような怖い病気に対して、主力の対抗手段となっているのがカテーテル検査・治療です。カテーテルとは、太さ2mm程度、長さは1mを超える大きなストロー様の器具です。

これを手首や脚の付け根の血管から心臓まで通します。このストローを通して造影剤という薬剤を冠動脈内に注入し、それをレントゲンで撮影する事で冠動脈に狭窄/閉塞がないかどうかを明らかにする事ができるわけです。
さらに、先端に風船のついた別のカテーテルを冠動脈の狭窄/閉塞部位まで運び、そこで風船を膨らませることで冠動脈血流を改善させ、心機能のさらなる悪化を防止することが可能となります。また、風船治療と同時に、病変部位にステント(管状の金網)を留置し血管を補強することで、再び冠動脈の狭窄が起こるリスクを減少させる治療も行われます。

カテーテル検査・治療は局所麻酔で行います。カテーテルが通る程度の数mmの切開創が皮膚に残るだけなので体への負担は非常に小さく済みます。また、手首からの検査/治療の場合、終わった後は手首に止血バンドを巻く以外は制限なく自由に動く事ができます(足からの場合は4-6時間程度の安静臥床が必要です)。翌日には退院も可能となります。当科では一般に、急性心筋梗塞発症の場合は10日から2週間程度、狭心症ならば2泊3日の入院となります。

このように、カテーテル検査・治療は、その簡便性、低侵襲性から、以前は冠動脈バイパス手術しか方法がなかった狭心症/心筋梗塞の方に対してもどんどん行われるようになり、同等の治療効果が得られるようになっています。
また、カテーテル治療は、閉塞性動脈硬化症(足の動脈に狭窄/閉塞が生じ、しびれ、冷感、歩行時疼痛等の症状が現れる)にも適応が広がっています。 当科では年間500-600件のカテーテル検査と約150件のカテーテル治療を行っています。

出血、感染症、血栓塞栓症、造影剤によるアレルギーなどの合併症の可能性も僅かながらありますが、早期発見、早期治療により、心筋梗塞や閉塞性動脈硬化症の発症を未然に防ぐ事ができます。

胸が痛いと思ったら(みぞおちの痛み、喉元の違和感、左肩の違和感など症状の出現の仕方は人により様々です)、あまり我慢せず、循環器内科を受診してみてください。

村上総合病院 循環器内科 岡田慎輔/真木山八城

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