尿路結石症について

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尿路結石ができる原因は人種、気候、文化などよりも食事の影響がはるかに大きいことが分かっています。読んで字のごとく「尿路」に石ができる病気で、尿に溶けているカルシウムやシュウ酸などが何らかの原因で結晶となり石のように固まってしまうのです。石が出来る部位によって「上部尿路結石」と「下部尿路結石」に分かれますが、現在では 約95%は前者、すなわち腎臓で形成され、これが尿管に下降したものです。後者の膀胱結石あるいは尿道結石は約5%のみで、前立腺肥大症や尿道狭窄などの尿の出にくくなる状態の時に出来やすくなります。

石が作られる過程は、尿中の結石成分の濃度が何らかの原因で過飽和状態になって腎臓に結晶核が生じ、その結晶が成長、凝集して結石となると考えられています。2:1以上の割合で男性に多い病気です。

尿路結石のなかでも圧倒的に多いのがシュウ酸カルシウムを主成分とするものです。尿中のシュウ酸が増えることが最も悪影響を与えます。このタイプの石が尿路結石のおよそ8割を占めています。

自覚症状は「疝痛発作」と呼ばれる激痛が特徴的です。時に冷汗、吐き気を伴うこともあります。また、結石により尿流の通過障害があると、腎盂腎炎から敗血症という怖い病気を誘発しますから速やかに専門医を受診して下さい。

治療でまず行われることは、自然に尿道から結石を排出させることです。水分を多量にとり、尿管の蠕動運動を活発にさせることで結石の下降を促します。

侵襲的療法は結石が1cm以上の大きさで自然排石が困難、あるいは尿の流れが阻害されて水腎症になる恐れがある時、薬の効かない尿路感染症がある時、激しい痛みがある時に行ないます。現在では体外衝撃波結石破砕術(ESWL)と呼ばれる方法があり、これは体外で発生させた衝撃波を体の中にある結石に集め、そのエネルギーで結石を砕くという治療です。大きな結石あるいは硬い結石でESWLに抵抗する場合、あるいは解剖学的にESWLが施行しにくい場合には内視鏡的に砕石する方法も行なわれますが、今日では開腹手衝は稀にしか行なわれなくなっています。

食生活での心がけで最も注意したいのは水分の補給です。結石は尿の過飽和状態が要因となるので、尿中のミネラルの濃度を低くするために1日2リットル以上の尿量を保つようにしましょう。汗をかいて尿量が減る夏は努めて水分を補給するようにして下さい。しかし、アルコールを大量に飲むのでは逆効果です。特にビールには結石のもとになるプリン体が多量に含まれています。

尿路結石の約80%はシュウ酸カルシウムなどカルシウムを主成分としたものです。この種の結石の形成ないしは再発には尿中のシュウ酸濃度が重要であることが分かっています。このため結石予防のためには、カルシウムをしっかりとったほうが良いのです。つまり、カルシウムは腸管中でシュウ酸と結合しシュウ酸カルシウムとなると腸より吸収されなくなり、尿中へのシュウ酸の排泄を抑制してくれます。また、脂肪を多くとると吸収されなかった脂肪酸が腸内でカルシウムと結合し、シュウ酸と結合すべきカルシウムが減少してしまいます。このため、吸収可能な遊離のシュウ酸が増えてしまいます。シュウ酸を多く含む紅茶、コーヒーにはカルシウムを含むミルクを入れればシュウ酸とカルシウムが結合して不溶性の結晶になり、吸収されにくくなります。

偏った食生活や過食、運動不足になると結石が出来やすくなります。食事はバランス良く、規則正しく、を心がけて肥満にならないように注意しましょう。「結石は夜作られる」という格言があり、夜食べたものが尿中に排泄されて尿中の濃度が高くなり結石が出来る好条件になります。

また、結石になりやすい年齢があります。20~30年前には20歳代であったピークは最近では40歳代、50歳代と高齢化してきました。多くの病気がそうであるように、尿路結石の予防も規則正しい食事と適度の運動にあるようです。

村上総合病院 泌尿器科 小松 集一

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