手首の骨折後のリハビリテーション

ABOUT

手首の骨折は、年配の方が手のひらを床や地面に突くようにして転倒した時に起きやすい骨折です。この骨折は、前腕にある2本の骨のうち親指側にある橈骨(トウコツ)の手首に近い部分に起ることが多く、専門用語では橈骨遠位端骨折(トウコツエンイタンコッセツ)と呼ばれています。

この部の骨折の治療として、骨折部のズレが少ない場合には、ズレの整復の後にギプス固定を行います。この場合、ギプス固定中もギプス除去後も適切な運動を行わないと、治療後に関節の動く範囲が狭くなってしまったり、手首の筋力や握力が弱ってしまうことがあります。

今回は、手首の骨折の後に発生しやすい、こうした合併症を予防するためのリハビリテーションをご紹介いたします。

ギプス固定中に行うリハビリテーション

1. 骨折した手のむくみを軽減させるため、骨折した手を心臓の高さより上に保持します。
そのまま指をしっかり握ったり開いたりします(写真1)。

  • 指のむくみが強く、うまく握れない場合には、指先から指の付け根に向かって圧迫するようにマッサージをしてください(写真2)。
  • 運動後、熱感や痛みが出たら患部を冷やしてください(写真3)。
  • 1時間ごとに、10~20回、無理のない範囲で行ってください。

2. 肘を曲げ、肘を肩の高さまで挙げ、そこから肘を伸ばし、腕を耳の横につけます(写真4)。

3. 指を握る、伸ばす、開く、閉じる、親指を他の各々の指とつける。これらの運動を繰り返します(写真5)

指の運動を行う時は、肩・肘がリラックスしてできるようテーブルや枕の上に腕をのせるとよいでしょう。

ギプス固定が外れてからの運動 そのI

はじめのうちは重いものを持つといった強い負荷のかかる運動は、避けてください。

1. テーブルに腕をのせ、手首を手のひらの方向、手の甲の方向に動かします(写真6)。

2. テーブルに腕をのせ、手のひらを上・下に動かします。この時、脇をしめて行ってください(写真7)。

3. ギプス固定中の3の運動と同じ運動を行います(写真5)。

ギプスが外れてからの運動 そのII

ギプス固定が外れてかなり時間も経ち、運動負荷をかけられる状態となったら、以下のような運動を行います。

1. 手のひらを胸の前で合わせて、肘を上げていきます(写真8)。
次に、手の甲を体の下の方で合わせて、手首部分を胸の前に上げていきます(写真9)。


2. 両手を組んで脇をしめ、手の平が天井側、床側に交互に向くように怪我をしていない手の力を使って動かします(写真10)。

3. 指先の運動として、ゴムボールを握ったり、洗濯バサミをつまむなどの運動を行い、筋力をつけるようにします。

以上、手首の骨折の治療経過に沿ったリハビリテーションを紹介しました。各々の運動は、いずれも一回に10~20回程を、一日に3~4回行うことが望ましいのですが、体調に合わせ、無理のない範囲で行ってください。特にギプスが外れてからの運動は、骨折の回復の状態や運動の負荷量を担当医師に確認してから行うのがよいでしょう。

村上総合病院 リハビリテーション科 作業療法士 立石敦子

関連リンク