外科手術では新しい胸・腹腔鏡を用いた鏡視下手術が広まっております。これは手術する部位に小さな穴を数ケ所あけ、そこよりカメラや鉗子を入れて行う手術です。胆石症は早くに鏡視下手術が導入され、標準手術として行われています。最近では食道癌、胃癌、大腸癌などにも鏡視下手術は広まってきています。ガイドラインではまだ早期癌を対象とするものが多いのですが、病院によっては進行癌にも適応を広めております。患者側の利点としては、手術創が小さく創痛が少なく、術後の回復が早いことです。回復が早ければ食事の開始も早く、入院期間も短く、最終的には社会復帰も早くなります。手術後の患者を見ていると、創を大きく開ける手術と比べて楽そうで、鏡視下手術の良さを実感します。医療側からの利点としては、カメラが手術している所に近づくことができるので、手術野が拡大され詳細に見えることです。癌を治すという点では今までの手術と引けをとらず、安全性も問題ありません。術後の合併症に関しても術後肺炎、腸閉塞などは少ないと言われております。欠点としては患者側にはこれと言ってなく、医療側では実際に術者の手で触った感覚が得られないこと、開腹手術より多少手術時間がかかること、執刀医が疲労することなどでしょうか。総合的には鏡視下手術の方が理想的であると思われます。当院でも2004年1月より早期の大腸癌、胃癌、食道癌の順に鏡視下手術を導入しており、年々症例数は増えております。手術の既往があり癒着が予想される場合など、疾患以外の要因により適応とならないこともありますし、手術中に鏡視下手術では最後まで行えず、途中で今までの様な手術に変わることもありますが、主治医から鏡視下手術の説明があったのならばお勧めします。
村上総合病院 外科 渡邊 直純