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初めに、最近の消化器疾患の状況と臨床の進歩について紹介します。まずは、ウイルス肝炎ですが、C型慢性肝炎は、内服により95%程度でウイルス除去が可能となりました。B型慢性肝炎も、各種遺伝子検査や抗原/抗体検査を行って追跡することで、病気の進行や発がんのリスク予想が可能となり、さらに新しい薬剤(核酸アナログ製剤)がいくつも登場し、肝炎ウイルスの制御ができるようになりました。その結果、肝炎の進行も抑制できるようになりました。

さらには、ピロリ菌除菌による胃がんの予防効果が証明され、ピロリ菌胃炎に対する除菌が保険適応となり、除菌数は全国的的に著明に増えました。胃がんの罹患数は未だ増えていますが、死亡数はついに減少傾向となり、潜在的な胃がん罹患数は若年者では減少に転じており、近いうちに罹患数も減少すると予想されています。肝がん死、胃がん死は毎年、どんどん減少している一方で、現在は、大腸がんや膵がんが増加傾向です。がん以外では、慢性ウイルス肝炎が著減する一方で、肥満や生活習慣病を背景とした脂肪肝疾患とそれによる発がん、高齢化による胆道系の結石や炎症が増えると考えられます。

内視鏡の性能向上はめざましく、画像は年々クリアになり、特殊光やレーザーの併用により、早期がん発見の精度が向上しています。細い経鼻内視鏡でも良質な画像が得られるようになり、今までまったく内視鏡検査を受けていなかった人でも経鼻内視鏡を受ける人が増えています。当院のドックでも内視鏡検診を希望する人が増えています。内視鏡を用いた治療も日々進歩しています。胃がんや大腸がんの内視鏡切除以外に、胆道系がんや腸閉塞に対するステント治療は安全性も成功率も上がっており、80歳代後半や時に90歳代などの超高齢者でも結石除去やステント治療が可能となっています。

その他にピロリ菌診断のための尿素呼気試験測定器を導入し、当日すぐに結果を聞けるようにしました。また、最新のレーザー光源を備えた高解像度の経鼻内視鏡を導入しました。最近では、超音波内視鏡を購入したので、苦しい造影検査を必要としないで膵のう胞性疾患や胆道疾患の苦痛の少ない診断も出来るようになっています。また、診断困難例に超音波内視鏡下の吸引生検による診断(EUS-FNA)も施行していますので、消化管間質腫瘍(GIST)の確定診断や膵腫瘍の鑑別も可能です。さらには、胆道系や重症膵炎後の膿瘍や仮性嚢胞などの内視鏡的ドレナージなども少しずつ増えています。

患者さんへのはたらきかけとしては、平成30年1月、5月と8月にはピロリ菌と胃がんについての市民講座を、平成31年12月には村上保健所と共同で肝炎教室を開催しました。たくさんの参加があり、講演後に内視鏡検査やピロリ菌検査に多数おいでいただき早期胃がんの発見と除菌治療ができました。これからも、ピロリ菌と胃がん、ウイルス肝炎についてはもちろん、今後は大腸がんや脂肪肝、メタボリックシンドローム症候群などについても市民の皆さんに知っていただく機会を作っていこうと考えています。また、平成30年の秋からは、肝疾患サポートチームを結成し、患者さんの見逃し防止やよりよい治療の提案、他科や診療所との連携に役立てています。

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